不動産売却の仲介手数料無料は本当にお得なのか?
2021/10/21
不動産売却の仲介手数料無料は本当にお得なのか?
仲介手数料無料ロジック、メリット・デメリットを解説。
不動産売却時の仲介手数料相場はいくら?
不動産売却価格の3%に6万円を足して、消費税を加えた金額が上限。
不動産の取引時には様々諸経費が掛かりますが、多くの場合で不動産売却時の諸費用のうち最も高い金額を占めるのが不動産仲介会社に支払う仲介手数料です。
仲介手数料の上限金額は宅地建物取引業法で定められており、東京都内の不動産売買の場合は殆どの場合が売買金額400万円以上になりますので、上記計算式で求めた金額が仲介手数料の上限額となっております。
例えば売買価格5,000万円の土地付建物を売買した場合、仲介手数料の上限額は
5,000万円×3%+6万円に消費税を足した額の1,716,000円となります。
(売主が消費税課税業者の場合は建物代金から消費税を引いた額が売買価格になります。)
仲介手数料の金額は自由に決められる。
上記の仲介手数料の計算式は、あくまでも法律で定められた上限価格になりますので、不動産仲介会社によっては必ずしも上限価格の仲介手数料となるわけではありません。
不動産仲介会社の中にはあらかじめ仲介手数料の割引をしていたり、仲介手数料を無料にしている会社も一部ではあります。
では、仲介手数料は安ければ安いほどお得なのか?
これは、一概にそうとは言えません。
大切なのは、割引や無料になる理由、安い理由です。
そもそも、仲介手数料を安くする目的は、
『不動産売却の手取り金額を増やす』
ということに尽きると思います。
不動産売却時の手取り金額は、成約価格-諸経費により決まりますので、手取り金額を増やす手段としては
成約価格を上げる
or
諸経費を下げる
のいずれかがあります。
成約価格を上げるための方法
不動産の成約価格を上げるためには下記の方法が有効です。
①優秀な不動産仲介営業マンに仲介を依頼する。
②不動産の価値や魅力を訴求するためのマーケティングにコストをかける。
③より多くの不動産仲介会社に買主仲介を依頼する。(通称:レインズに登録する)
④リフォームや修繕を施し、不動産の価値を高める。
より多くの方に売却物件の価値や魅力をしっかりと伝えることが、成約価格を上げるために必要な最も基本的な方法です。
諸経費を下げるための方法
不動産売却時の諸経費を下げる方法には下記の物があります。
①各種の税制優遇を利用する。
②事前にしっかりと物件の調査をし、不測の支出が発生しない契約内容にする。
③仲介手数料を下げる。
上記の中でも特に気を付けるべきは、②の物件調査です。
事前の調査が疎かになってしまうと、後々買主との間に大きなトラブルを抱えてしまうことや、
場合によって多額の金銭的負担が発生してしまうことがありますので、その点から見ても、
信頼のおける優秀な不動産仲介営業マンに仲介を依頼することは重要と言えます。
また、③の仲介手数料を下げる場合には、そのことが成約価格を下げることに繋がらないかを
しっかりと確認し判断する必要があります。
仲介手数料が割引or無料になるのはどのようなケース?
【割引になるケース】
①店舗維持費や人件費などの固定費を削減して、あらかじめ仲介手数料を上限よりも安くしているケース。
②仲介手数料以外の収入、例えばリフォームや解体工事の契約、住み替えの仲介等を同時に受注することで他に収益を確保できているケース。
③取引の内容、成約までの期間に応じて仲介手数料を値引きするケース。
④広告費や販促費などの変動費を削減して、その分仲介手数料を割り引くケース。
【無料になるケース】
⑤もう一方の取引相手である買主から仲介手数料を受領するケース。
⑥仲介手数料以外の名目で金銭を受領するケース。上記②のケースも含む。
⑦不動産会社が自社で買い取るため、その取引がそもそも仲介取引に該当しないケース。
他にもありますが、主には上記のケースにおいて仲介手数料が割引または無料になることがあります。
上記のうち、成約価格が下がるケース、下がらないケース
諸経費を下げるための動きによって成約価格が下がってしまうと、結果的に手取り金額は増えません。
上記の仲介手数料が割引or無料になるケースを、成約価格に影響が少ない動きと成約価格が下がってしまう動きに分けますと、
【影響が少ないケース】
①固定費を削減して仲介手数料を割り引くケース。
②、⑥の仲介手数料以外の収入を得るケース。
③取引の内容や期間によって値引きをするケース。
【成約価格が下がるケース】
④広告費や販促費を削減するケース。
⑤買主から仲介手数料を受領ケース。
⑦不動産会社が自社買い取りのケース。
となります。
【影響が少ないケース】に挙げたものは、企業努力や利益構造によって、仲介手数料を割引にしてもしっかりとした
販売活動を行えている場合がありますので、一概に成約価格が下がるとは言い切れません。
反面、【成約価格が下がるケース】に挙げたものは、成約価格が下がってしまう可能性が高い項目になりますので、
仲介手数料の額は減っても手取り金額が増えない、もしくは逆に減ってしまうケースもあります。
(それぞれのケースが成約価格にどのように影響してくるかにつきましては、改めて詳報いたします。)
販売方法によって成約価格は5%以上変わります。
不動産売却の成約価格は、選ぶ仲介会社や販売方法によって5%以上変わってくることも珍しくありません。
仲介手数料の上限額が約3.3%ですので、成約価格が5%多いとすると、仲介手数料を下げるよりも成約価格を伸ばした方が
結果的に手取り金額は増えるということになります。
しかし、不動産は同じものが存在しない故に、同じ不動産を別の販売方法で同時に比較することはできませんし、
販売方法や会社の違いにより、明確に何パーセントの差が出たのかという検証もできません。
一般個人の方にとって難しいのは、
『提示された売買価格がベストな金額なのかどうか分からない』
ということではないでしょうか?
仮に成約価格がご自身の想定していた金額を上回って、満足な取引が成立したとしても、
その価格が本当にベストな金額なのかどうかまではなかなか分かりません。
そこで大事になってくるのは、
売却を依頼した不動産仲介会社が、どのようにその不動産に対して販売活動を行っているか、
どのようなマーケティングを行って、不動産の価値や魅力を高めてくれているか、
どれくらいしっかりと調査をして、将来のリスクを減らしてくれているか、
上記で挙げたような、成約価格を上げるための戦略を実行しているか、
また、それらが仲介手数料に見合っているか、
仲介手数料以上の価値を生み出しているか、
これらについて事前にしっかりと見極め、依頼する会社を選ぶことです。
不動産売却における大事なポイント
不動産を売却する際に考えておくべき最も大事なポイントは、
より好条件の買主を見つけ、安心・安全な売買取引を行うこと。
より好条件の買主とは、必ずしもより高く買ってくれる買主ということだけではなく、より安全に、
安心して取引できる買主、より早く決済してくれる買主など、売主の目指す目的によって変わってきます。
ですが、共通して言えることは、多くの購入希望者の中からたった一人の最も良い条件の買主、
いわばピラミッドの頂点にいるような買主を探し出すことは、決して簡単なことではありません。
多くの方の目に触れ、売却不動産の魅力や価値を知っていただく為には、本来相応の広告費や販促費がかかります。
また、買主を自社のお客様に限定してしまうと、他社の購入希望者の中に潜む「ピラミッドの頂点にいる買主」を
逃してしまう可能性も高くなります。
これから不動産の売却をご検討の方は、是非仲介手数料の金額だけではなく、
その不動産仲介会社が提供するサービスの内容、不動産の販売戦略のことまでしっかりと
確認していただき、後悔のないご判断をしていただければと思います。